人工筋肉(静電アクチュエータ)

1.アクチュエータの原理と構造

1-1.基本モデル~平行平板コンデンサ~

積層型静電アクチュエータの基本的な構造は平行平板コンデンサである。2枚の平行平板電極に電圧Vをかけたときに発生する静電力Fは、極板間距離をd、極板面積をS、誘電率をεとすると、次のような関係式として求まる。


積層型静電アクチュエータは、この極板間に発生する静電引力を駆動力として利用する。式から明らかなように、発生する力は極板間距離の2乗に反比例する。したがって、極板間の距離を小さくすればするほど、大きな出力を得ることができる。

図1:平行平板コンデンサ


1-2.2層の誘電体を考慮した場合

両極板のショートおよび放電の防止のため両極板を絶縁フィルムで絶縁し、絶縁流体中で電圧Vを印加したとする。絶縁フィルムと絶縁流体は誘電体の層とみなし、それぞれの厚さをt, dとし、比誘電率をε1, ε2とする。このとき発生する静電力Fは、極板面積をS、真空の誘電率をε0とおくと、

となる。なお、上式の導出の際には、絶縁流体の分極の効果も考慮している。

図2:2種類(個体と流体)の誘電体を挟んだ平行平板コンデンサ

 

1-3.積層型静電アクチュエータの構造

積層型静電アクチュエータは、2枚のリボン状電極を交互に折り重ねた紙バネ構造をしている。リボン状電極とは、図3のような銅箔をPET等で絶縁したフィルムのことである。

図3:リボン状電極



図4:折り込みの様子

 

2.理想的な動作にするための構造改良

2-1.理想的なバネ特性

積層型静電アクチュエータは、紙バネ構造による特有のバネ特性をもつ。バネ定数が大きすぎると収縮力と逆向きにはたらく弾性力が大きくなってしまうために収縮力が低下し、バネ定数が小さすぎると負荷をかけることで極板の変形が大きくなり極板間距離が必要以上に広がってしまい収縮できなくなる。したがってバネ特性としては、収縮する領域でのバネ定数が0で、それ以外の領域でのバネ定数が∞であることが最も理想的である。
理想的なバネ特性を得るためには、電極部を歪みにくい構造にすればよい。これを実現するために、次のような構造のアクチュエータを現在は製作している。

  • 電極部を厚くした構造
  • 電極部を三角形にした構

2-2.電極部を厚くした構造

電極部を厚く(ヒンジ部を薄く)することで、ヒンジは変形しやすいままで電極を変形しにくくできる。作成方法としては、通常のリボン状電極にさらに絶縁フィルム(PET など)を貼り付けて電極部を厚くする方法と、ヒンジ部とするところだけをエッチングするなどして薄くする方法の両方を現在行っている。以下に示すのは本研究の共同研究者である、鈴鹿高専の奥田氏によって作成され2mm角アクチュエータである。

図5:フィルム断面


図6:完成したアクチュエータ(2mm角)


図7:電極部を厚くしたアクチュエータ負荷の大きさと変位

 

2-3.電極部を三角形にした構造

電極部分が四角形の場合、向かいあった電極と共有する辺は4本あるうちの(となりあった)2本のみであるから、アクチュエータを伸ばしたときの電極部分の歪みは大きい。一方、電極の形を三角形にすると、共有する辺は3本あるうちの2本となり、電極の歪みは小さくできる。
 三角形アクチュエータは、リボン状電極の間の角度を120°にして交互に折り重ねることで製作できる。


図8:三角形電極(左)と四角形電極(右)


図9:三角形アクチュエータの折り込み

 

3.微細化

原理の説明(1-1)でも説明したように、大きな発生力を得るためには極板間距離を短くすればよい。我々は微細化によって電極間距離を短くし、単位面積あたりの発生力を大きくすることを考えている。
 現在までに、0.3mm角の大きさのアクチュエータの駆動、および単位面積あたりの発生力の増加の確認に成功している。また、リボン状電極はすでに電極部が0.1mm角のスケールまで微細化できている。

 

4.並列化

微細アクチュエータは単体では発生力が小さいが、並列化(横に並べて極板面積を増やす)によって発生力を大きくすることができる。
 このような集積化を行うことにより、積層型静電アクチュエータはマクロスケールでも用いることが可能となる。

 

図10:微細化

 

5.現在の取り組み

5-1.実用化に向けて~静電エンジンの開発~ 

工事中・・・